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【結の仕事術vol.6】「なぜ?」を刺激する


出版プロデューサーとしてさまざまな本づくりに携わってきた平田静子が、人と人、情報と情報を「結ぶ」仕事術を紐解くシリーズ連載「結の仕事術」。

連載第6回は、「笑っていいとも!」の人気コーナーから生まれた240万部の大ヒットクイズ本「世紀末クイズ」の誕生秘話。


お昼どきの頭の体操

その中で、私にとって格別の思い出となっているのが、24年前の「ウッチャンナンチャンのそれ絶対やってみよう!」というコーナーだ。

この中で生まれた「世紀末クイズ」 が、中高生を中心に絶大な人気を誇っていたのだ。

クイズといっても膨大な知はなく、「ニンニクは9歳、大根は8歳、ではワラビは何歳?」というようなもの。
答えは「3歳」。なぜなら「ニンニクは9歳=くさい、大根は8歳 =野菜、ワラビは3歳=山菜」という他愛のないもの。

クイズというより「とんち」「なぞなぞ」といったところだが、当時の若者にはそのバカバカしさが受けていたようだ。 

思いついたら即行動


番組のプロデューサーも面白がってくれ、たちまち企画が通った。 しかし、ただ本にするのではつまらない。
中高生に人気のこのコーナーらしい「ひねり」の効いた面白さがほしい。 

そこで、通常のサイズより小さなハンディーサイズの豆本にすることにした。これなら中高生がカバンに入れて学校に持っていくのにちょうどいい。 

そして、タイトル。「ウッチャンナンチャンのそれ絶対やってみよう!」では長過ぎるし、番組を見ていない人には全く伝わらない。誰にでもすぐ分かり、番組のファンにも喜ばれる名前、ということで、『タモリ・ウッチャンナンチャンの世紀末クイズ』というタイトルにした。

90年代に入ってからというもの、ノストラダムスの大予言で地球滅亡の日といわれた1999年がいよいよ間近に迫ってきたという感覚を持つ人が増えつつあった。「世紀末 」という言葉は時代にフィットしたのだろう。 

本ができると、私はすぐに「笑っていいとも!」の現場、新宿アルタまでタモリさんに会いにいった。番組でこの本を宣伝してもらえるよう、お願いするためだ。 

「この本が売れないと、私、会社をクビになるんです!」 

もちろん、冗談だ。タモリさんは「えーっ!」と笑いながら受け止めてくださり、番組の中で本を紹介してくださった。 

「何か、売れないとクビになっちゃうらしいよ」 

私のジョークも使ってお客さんの笑いを取っていたのが、うれしくもあり、ありがたくもあった。 タモリさんの力添えもあり、この本は売れに売れ、何と100万部近い数字となった。 

その勢いに乗ってパート2、パート3も出版されることになり、合わせて240万部という大ヒットとなった。

「?」が人を刺激する


15年から20年のサイクルでクイズブームがくるといわれている。クイズやなぞなぞ、ミステリーなど「なぜ?」を刺激するものはこれから先も永遠に尽きることがないだろう。 

人は「なぜだろう?」と思うと、分かるまで考えたいものだ。営業トークやプレゼンなどで「なぜだと思いますか?」というフレーズを入れると、相手との距離が近くなるのも、そのせいだろう。 

人は問いかけに弱い。「考えさせる」ということは、もしかしたらコミュニケーションの最善の方法かもしれない。

※この「結の仕事術」は、雑誌【経済界】にて2015年5月26日号から2016年4月5日号までの11ヶ月、22 回にわたって連載されたものをHPに転載しているものです。

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